今回のテーマ「アイドル」
一等:平井悠大
講評:平井悠大
2018年度、第4回目。キラキラと輝くアイドル、人々の憧れの象徴です。”憧れ”は若さと親和性の高い感情であり、なにかに憧れ、そして失望することが成長の一つのプロセスとなります。
現実的に捉えた時、アイドルという職業は人々に憧れを抱かれ続けなければならないという宿命を抱えた存在です。人であるアイドルが象徴としてあり続ける、そこにある矛盾が一つのドラマであり、それを、それとして楽しむことが暗黙の了解であったりもします。
今回の作品にはヒトとしてのアイドルをとらえた、輝いてばかりいられない彼女(彼)達の姿が多く見られました。手の届きそうで届かない迷宮のようなアイドル像の瀬川くん。アイドルとファン相互の認識のすれ違いを描いた藤沢さん、アイドルのキャリアを立体として多視点から図式化した味村くん。
憧れだけのアイドル像に私達はなんの新しさも感じません。スパイスの効いたエスニック料理を嗜むような、アイドル文化の爛熟を感じさせます。
一等は原点としてのアイドル像を想起した平井の作品です。
y=ax^2で表される放物線は、パラボラとしての性質を持ち、そこに投射された平行波を焦点に集めるという性格をもつ幾何学です。4つの黄金に輝く放物壁面に投射された光は中心軸を貫く焦点へと集約されます。
人々の憧れを集め、輝く彼女達。
そもそものidolとは崇拝を集める象徴としての存在を指していました。憧れが高次に至ると、y=ax^2のaが増加し、強い傾きをもった壁面はそこに十字を描きだします。aの増加は同時ににy=a/2で指定される焦点との距離を生じさせ、彼方の存在への憧れとしての崇拝が人々に抱かれるのです。
身近なアイドルから、神としてのアイドル。”アイドル”の奥深さを感じます。
次回のテーマは「時間」です。
参加者:平井、瀬川、藤沢、味村