一等:なし
講評:関健太
本年度12回目です。
4年前期も残りわずかとなってきました。
テーマ「虚構」
虚構とは、事実ではないことを事実らしく作り上げること。つくりごと。フィクションのことである。
世のコンペにおいて虚構は付き物である。実施コンペにおいても名だたる設計事務所のパースの全てがフィクションであると言っても過言ではない。それだけ事実らしく作り上げるつくりごととしての表現は建築を伝達する際に必要な能力と言える。(fiction 1)
そしてそのような完成系としての建築的フィクションも存在すれば、提案内容をあえて事実的関係から外してコンセプト模型として提示する場合もあるように思われる。それもまた虚構という言葉にふさわしい伝達方法としての建築表現である。(fiction 2)
fiction1は林の作品である。模型自体は塩ビ板を用いた簡素な立体のため、掲載していないがプレゼンにはそれなりの内容が存在していた。
建築の構築している壁は光を反射させ、あるいは通過させる素材でできている立体物である。それにより、周辺の環境が投影されたものと奥に移る現実の風景が重なるというファサードを形成する。
そこで描かれているのは体験として現れる目の前の景色が、人が自ら認識することが難しくなる環境を建築を通して築いているということである。
異る景色が重なることにより、生まれる二重性のある景色が人を戸惑わせるのである。そこに事実から乖離した虚構なる形態美があるのではないか。ある種のコンテクスチュアリズムから生まれた虚構の形態化である。
続いてfiction2は関の作品である。これは1つの建物が4面が異る店舗でできているというもの。その一店舗に人が入ろうとしている場面である。
これも実にフィクションである。ありえないもの。しかし、これについて1つ言及するならば、異る性質を持つお店が共存し、1つの建築を形成しているということを前提に考えると、特徴的な4面のファサードではなく、その先の、中に入っていったあとの内部空間に新たな可能性があるのではないかということである。
一般的な商業としては各店舗が独立し、それぞれの運営を行っている。それをどこかの企業が統括し営業することで、我々のよく知るショッピングモールができているというわけである。しかしこの作品では違う店舗の独立していた内容が、内部でミックスされた関係性が生まれるように内部空間が構想できないかといったコンセプトの提示が行われるようにあえてフィクションとして作っている。新たなコラボレーションを模索した虚構の形態化であった。
どう伝えるかということの重要性が、今回の虚構から見えてきたように思われる。
おそらく我々が学部の集大成として取り組む卒業設計もそのほとんどかフィクションである。それをどれだけ事実らしく、そして面白く表現するか。
とても大切なことを再確認できたような気がした。
参加者:斎藤、関、土田、中、林