Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

123回「密度」

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フライヤー作成 : 波多

 令和二年度原田真宏研究室B4によるSHU-MAI第4回目を迎えました。

今回のテーマは「密度」です。「3つの密」を避けようなどといった「距離の近さ」や「事物の粗密」を示す場合もあれば、物理では「単位体積あたりの質量」を示します。どちらも建築にとって関わりの大きいものでしょう。そこで「密度」から考える建築/空間を考えます。

 

 

 

最優秀案は小野案

 

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(以下,出案者による説明文)

建築のマテリアルには「密度」が欠如している。
ペンのように手のひらに乗せることができるものはマテリアルの性質として触り心地、冷感、色, etc.そしてそれらに加えて「密度」を持っている。
建築においても当然、構造等で「密度」は考えられていて、完全に捨象されているわけではない。しかし体験者がそれを知覚する術はほとんどないといえる。
ところで建築的形態の中で最も密度を伝えられる形態とは空隙の一切ない純粋な塊である。例えばタングステンの塊がここにあったとしてその塊の密度を上げることは容易ではない。
なぜなら密度とは化学的組成によって、きまりきっているからだ。しかし、疑似的に密度を下げることはできる。単純に中を空洞にすればよいのである。質量は変わらずに体積が増すのだから、必然的に密度は下がる。
ここで気づくと思うが建築とは空間をつくる以上、常にマテリアルの密度を下げる操作を行っているのである。
上の立面図で見て左側のボリュームは中に空間を設けてある。反対に右側のボリュームは左側のボリュームと全く同体積の塊である。

この2つのボリュームがつり合うことによって鑑賞者は、建築の純粋な「密度」を知覚する。

 

 

優秀案の西村案

 

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(以下,出案者による説明文)

密度をある領域における図もしくは地の割合とするならば、空間として図と地の反転が起こるようなものがつくれないかと考えた。
円錐の柱の周りにスロープを回すことで図と地のグラデーションを生み出す。
プログラムとして商業施設を想定した際には低層部の消費空間と高層部の非消費空間を緩やかにつなげるものとなるだろう。

 

 

優秀案の鶴井案

 

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(以下,出案者による説明文)

密度には必ず枠が存在する。
枠の変化によって密度は変化する。
建築はこの枠を作り出すことができる。
大きな内開き戸による枠の変化と作り出される表裏によって密度を変化させる空間を考えた。

 

 

総評:小野案と西村案はヴォイドとマッスの操作という点で類似していました。最優秀案に選ばれた小野案はヴォイドをマッス化し、それがやじろうべえの様に釣り合うことで普段は知覚されることのない「密度」(≒重さ)を可視化したアイロニカルな空間と魅力的なドローイングが目を引きました。西村案は建築における図と地(マッスとヴォイド)を高層部で反転させるファンタジカルな形態が特徴的でした。図と地の関係の操作ではすみだ北斎美術館(西村案を逆さまにしたような空間)を想起しますが、都市における建築の類型となり得る可能性が感じられました。鶴井案はドアによる空間の劇的な変化を「密度」と絡めた提案。コンペなどで時たま見かける案ですが、やはりその先の可能性を感じるものとして優秀案に選ばれました。

 

 

出案者 : 小野、小竹(堀越研)、鶴井(トム研)、豊田(トム研)、波多、西村(トム研)、箭内

 

文責 : 波多