Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

139回「🥚」

令和五年度原田真宏研究室B4によるSHU-MAI第3回目を迎える。
今回のテーマは「🥚(卵の殻)」である。

今回は、前回とは異なり、言葉から形を作るのではなく、まず形を作る、という方法をとった。今回のテーマは「🥚」だが、この目標通り、8人全員が卵の殻の形から「形」を作っていった。

形に縛りがあるため、似てしまうかと思われたが、そんなことはなく、それぞれの個性が出た作品となった。この作品で何かを伝える、メッセージ性の強い作品と、これをプロトタイプとしてこれから作る建築の一部にできるのではないかという提案としての作品に分かれたと私は分析する。

今回は自分でテキストを書いていないため、以下の文章はすべて中西が書いた議事録、感想となっている。


【飯泉案】


『「」←→細胞←→「」』

みんなの予想では、地図の中にいる自分、という小さな存在、という対比なのではないか、と考えた。さらに卵の殻のひとつが大きな自分がいる一つなんじゃないか、とも考えた。
タイトルがわかった後は、穴埋め?!難しいのきた!となった。(笑)
←→細胞←→「肌」なんじゃないか?と考えた。
机と椅子があることに対して、「机上の空論」と表されるように、実際には目に見えていないことを書籍を通して学んでいるだけなんじゃないか、という考えもみられた。実際には飯泉君は、大きな人が学者で、見ているのは細胞と見立てた。
その姿を見て、宇宙でサルの研究をしていた野田さんが宇宙からの地球の砂漠がサルの細胞に似ていた、と言っていたことを思い出した。今自分が見ているこの模型も、卵をつぶしてできたもので、それが細胞に似ている。その細胞を見ている学者と、砂漠の乾いた土地を模型にした。
いろんなスケールで見た時、形として共通点を持つものはどこかつながりがあるのではないか、と考えたそうだ。

 

 



【井浦案】

「聖域」

みんなの予想では、黒い人は入ってはいけないのにはいってしまって、卵の殻が割れた、と考えた。実際に井浦君が考えていたのは、以下のようなことだった。
固くて中のものを守るためにできたのに、自立できないことも神秘性と捉え、卵の神秘性から侵してはいけない聖域を想像し、入ろうとしている人は、聖域の習わしを理解しているひと。落っこちている黒い人は、聖域に入りたくて、入ったひと。しかしこれは、結果的にこの聖域を汚したひととなってしまった。
また、中に入って気づくこともあるんじゃないかと想像しながら作品を作ったそうだ。

 

 


【鈴木案】

「浴巣」

みんなの予想では、人が入っているためお湯に見立てて、サウナにいる人、水風呂、ゆる湯と熱湯、のように考えた。さらに、浮いている卵の優しい感覚から、母の胎内や死んでいる人が天国で入るお湯、と想像することもあった。
色は、周りの環境に意味があるのか、それともその人の個性という意味で色がついているのかについての興味も見られた。
形をそのまま受け取って、リゾートなんじゃないのか。という意見もあった実際に鈴木君の考えによれば、量産されたバスタブに意義を唱えている作品で、卵を割ったときのいろんな形やいろんな色の浴槽に入りたいとの考えからできたものだった。
自分の巣を作るように浴槽も作りたい、という。
薄皮を残したのも浴槽が内側はつるつるで外側がざらざらなイメージからできた。

 

 


【服部案】

「縁」

なぜこの色なのか、白と黒での対比と白と赤の対比はあるが、黒と赤の対比はないなどと話した。タイトルを見たみんなの予想では、色を塗ったのは縁を際立たせるためか、となった。服部は、縁の線を重ねた空間はどうなるのかについて考えた。
空間の定義から問い直して、考えが出発した。
今窓の外から見ても、ビルなどの縁、が重なって奥行きを演出している。現状はその縁が単調だが、卵の殻を見ていたらこの卵の殻がつくる縁は、全然違うものなのではないか、と考えた。

 

 

 


【中西案】

「地層」

みんなは、オムレツ、お好み焼き、目玉焼き、ケーキなど実際の食べ物を想像した。一方、再利用するものやごみを隠ぺいしたのではないか、という社会へのアンチテーゼなのではないか、などの深い意見もあった。
卵のスケールと、人のスケールの違いから卵も小さな人間から見たら
卵が分解されて肥料になる過程なのではないか?これを見ている私たちを分解者なのではないか?などの意見もあった。中西は、人添景は、地層を見る幼いころの自分だと考え配置した。
私たちの建築を作るプロセスには、まだまだスケッチブックなどからはわからないものばかりだ。
しかし、人類が歩んできた地層はすべてを記憶する。その神秘性を形にした。

 

 


【松野案】


「回遊式庭園」

みんなの予想では、卵の殻が作る自然の地形、を表したのではないか、という意見が一番だった。バルサで作られた水門、桟橋、展望台はそれを望むものなのだと考えた。
タイトルを見て、門を入り口と認識した。庭園という名前から人の手が加わっているのではないか、とも想像した。他の作品にはない、凹の部分を使った。卵の殻の割れ目の不規則性をもっと面として肥大化して広げてみよう、と試みた。
それをすると、地形の様なものが立ち上がったから、中心性があるからここを池にして、さらに橋や門をつけることで、これを建築空間にする。
どんどんと次のアイデアに発展する案だった。

 

 

 


【江口案】

「面」

みんなの予想では、単純に大きな卵へと目指して歩いている人や、スケールが違うことによって床にも椅子にもなることや、そこにいるひとはうさぎとかめなんじゃないかということや、曲面を感じられることなどがあった。
面、というタイトルを見てから、曲面もスケールが小さかったら平らだけど、大きくなったら曲面を感じられる。それを体感している人を置いた、のではないかという予想へと進化した。
形からは上流と下流を想像し、地球ももとは大きなものばかりだったがどんどんと繊細なものへとなっていったのではないか、と考えた。
パルテノン神殿の欠片を敷き詰めてランドスケープとする、という発想か?という意見も見られた。江口君が考えたのは、曲面も小さくすると、平らで人が踏めるし、曲面を大きくすると、湾曲が大きくなる。さらに大きくなると建築空間になっていくという予想は的を得ている、ということだった。

 


【町田案】

「点と線」

みんなの予想では、実際に建築的要素として卵の殻を使っているんじゃないか、と考えた。
美術館のような建物の動線になったり、ベンチになったりしている。そこから、建築と美術館の中の作品の中間的存在、として扱った、などと考えた。実際に町田君が考えたことは、卵の殻同士が支えあう接点同士が線になって構造に、そしてそれが建築になっているということだった。
卵の殻が作る影も、従来の素材で作ったときの線的ではなく美しいのではないか、という意見もあった。
さらに材料に関して、隙間からの見え隠れから発想して、プラダンとスチボの素材感と似ていることを発見した。
プラダンは透過性があり、スチボのように白い見た目である。


【総評】

分類をしてみることが困難だった。
全て卵の殻でなくてもよい案になっていて、これは、「卵」という言葉からの発想をせず「形」から発想しよう、という今回の目的に合致したものとなったため結果的にはよかった。

次回に向けた議論も白熱した。
「3」のときと、「感染」のときは、発表時にテキストを見せるか、その前にみんなで想像するか、という違いを作っていた。そのどちらをこれからやっていくかについての議論が盛り上がった。
そこで、思いが伝わる「かたち」がよいのか、むしろ少し考えた後にわかる「かたち」がよいのか。

次回表現をどうするのか、についても話し合った。
タイトルをつけるのかつけないのか、自分でつけるのか人がつけるのか、その場合は説明が先か後か。
ビジュアルで表現することを義務にするか、しないかなど、細かいルールにもこだわり話し合いを続けた。

最終的には、ビジュアルで表現する試みをすることとした。

(文責:中西)



【次回:第140回】
SHUMAI 第4回 
テーマ:「すべり台」

5/12 15:10~17:00 (出力など時間厳守)

《最終成果物》

1/100のスケール固定で、建築空間を作る。
再度、言葉からの発想をする。さらに今回の新たな試みは、ビジュアルで表現することだ。

お楽しみに!

(文責:中西)