Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

131回「コンペをコンペする」

 

出題:河本一樹
フライヤー制作:曾原翔太郎

はじめに

 原田研究室B4生によるゼミ「SHU-MAI」。令和4年度の初回は、SHU-MAIのあり方を見直す意味も含め、『第0回』として開催されました。今年度は研究室内にとどまらず、他学年や他大学からも出展を募ります。

 

 

【出展者一覧】

井筒悠斗|原田研究室B4

河本一樹|原田研究室B4

岩田理紗子|原田研究室B4

佐倉園実|原田研究室B4

川村寛樹|原田研究室B4

曾原翔太郎|原田研究室B4

東尚生|原田研究室B4

長谷川奈菜|原田研究室B4

末松拓海|芝浦工業大学建築学部B2

半田洋久|芝浦工業大学建築学部B2

 

課題文

 あなたが建築学生ならば、設計課題やコンペに参加したことがあるに違いない。審査委員の出題から議論が始まる『コンペティション』。参加者は、出題をもとに議論しながら作品を創り、後に審査委員が議論して優秀者を選定する。そして、受賞者が決定したあとも世間ではさらなる議論が起こるだろう。審査委員を務めるような有名建築家でない学生たちは、このような、フラクタル状(※1)に発展する議論の起点になった経験があるのだろうか—。

 原田研究室SHU-MAIでは、研究室や学年を横断し、誰もが「出題者」になることができる。つまり、あなたの考える「コンペ」が第1回以降のSHU-MAIのテーマになるのだ。(無論、出題者も今後のSHU-MAIにも参加可能)

 吉田素文氏(※2)は、議論の方向づけには「広げる、深める、止める、纏める」の4つに影響されると主張している。これらが理解されないまま議論が進むと、まるでロマネスコのつぼみ(※3)のようにあらゆる方向に枝分かれしてしまう。議論がまとまって進むためには、参加者の議論に依存するばかりでなく、取り組みやすいテーマや出題方法も考える必要がある。あなたはどのような空間や議論を求めてコンペを出題するのか、様々なテーマを募ることとする。

 

※1 フランスの数学者ブノワ・マンデルブロが導入した幾何学の概念。図形の部分と全体が自己相似になっているもの。野菜のロマネスコブロッコリーフラクタルの性質を持っている。
※2 グロービス経営大学院教員。インタラクティブな経営教育の方法論を専門としている。企業での経営者育成、シニアマネジメント向けプログラムの設計なども行っている。
※3 ロマネスコのつぼみ部分は、自己相似の幾何学を持ち合わせている。

 

応募資格…所属研究室や学年は問わない。
応募方法…原田研究室在籍以外の学生は、4/19 火曜日までに以下メールアドレスに応募する旨を伝えること。( 担当者 dz19185@shibaura-it.ac.jp)
提出物…出題者の学籍番号・氏名。従来のSHU-MAI のようにテーマを言語化する必要は無いが、その狙いは言語化すること。ある音楽や絵画の空間化を課題と
するなど自由である。ただし、議論が成立するテーマを設定すること。課題の制約として模型や提出用紙などの大きさなど提出方法のフォーマットを指定すること。
課題要綱…A4 サイズのフライヤーを印刷して提出すること。紙質は問わず、立体的な表現も可。その他、追加で任意のフォーマットのものを提出してもよい。
提出方法…ゼミ日までに完成させればよい。オンライン対応のため、以下のメールアドレスにPDF でも提出すること。( 担当者 dz19185@shibaura-it.ac.jp)
優秀作品は、第1 回以降のSHU-MAI で題材にされる。該当回は、必ず講評会に参加できるようにすること。

 

【最優秀賞】

河本一樹案

 論考コンペから着想を得た『世界最小の論考コンペ』。1週間で取り組みやすいシンプルな内容となっているが、1文字に到達するまでのプロセスや最終的な表現方法には幅広い選択肢がある。たとえば、個人が持っている建築観から1文字を選択し、それをモンタージュする方法があれば、対照的にフィジカルな作品を制作してからそれに当てはまる1文字を探す方法もある。単純に文字を選択するにしても、文字に介在する意味、タイポグラフィに隠れる含意、文字の文化的背景など基準は数多く存在するだろう。

 少ない情報から数多の案が出展され、より活発な議論が生まれることが期待されるため最優秀作品として選出された。なお、この案は次回132回SHU-MAIの課題となる予定だ。

 

【優秀賞】

末松拓海案

 今年の4/1から、「うまい棒」が10円から12円に値上げされた。末松さんは、日本を代表する銘菓が国民に愛されているのは、大量生産が要因だと考察した。

 彼は、建築家が大量生産から逃げている問題を指摘しており、今よりも大量生産と向き合うべきではないかと主張している。

 プレゼン後の講評では懐疑的な意見が多く出た。東さんは、建築家が大量生産を悪としているのは現代からであり、ル・コルビジェのドミノシステムはそれが起点となって大量生産が可能になり評価されたと意見した。それに対し出題者は、「現代の非無個性な大量生産を考えてほしい」と返答した。

 この案は議論が最も白熱したひとつであり、議論の内容が結果に影響したのだろう。さて、現代の魅力的な大量生産とはいったいどんなものなのだろうか?

 

【佳作】

佳作は同数票が集まり2案となった。

 

佐倉園実案

 「つつむ」という行為が『つつむもの』と『つつまれるもの』という対照を生むという点にフォーカスした出題である。例えば、フランク・ロイド・ライトのプレーリースタイルは、それまで四角い箱で包まれた空間に革命を起こすべく「包み方」を変えた。

 単に「つつむ」と言うと暖かみを連想するが、「包囲する」という言い方をすれば意味は変わらずとも印象が変わる。この提案は、空間のあり方に直結するような課題であるとともに十人十色の「つつみ方」が期待できることから、佳作に選定された。

半田洋久案

 半田さんは、原田研究室が「建築家になりたい人が入る研究室だ」という噂を耳にしたことから、この出題を考案したそうだ。建築家は思想を持っている。あるひとつの学問を学び続けるとそれぞれの思想が生まれる。ただその思想は、本当に求められているのだろうか?

 彼は、1年間建築を学び自分が民衆とずれていることに気付いたと言う。そこで、建築学に触れてこなかった建築に無縁で無関心な家族のために住宅を設計することを要求した。

 議論のなかでは、テーマと求めていることが矛盾している点などが指摘されたが、4年生で失ってしまったフレッシュな考え方を実践できる出題であったことから佳作に選定された。

 

【総評】

 今年度のSHU-MAIは昨年度までと大きく傾向を変えたため、議論が充実するか一抹の不安があったが、各々の出題に参加者の色が出ていて大変興味深いものとなった。普段出題される側にいる学生たちが、出題する側に立つ。今年度第0回SHU-MAIは、自身の設計活動を活性化させるため、見つめなおすための良いアクセントになっただろう。

 また、今回は2年生から2名参加していただいた。彼らの案は、ほかの発案者と異なった視点の出題であり、原田研究室B4以外からも出展を募ったことが成功しているといえる。

 

 次回、132回SHU-MAIは、今回の最優秀作品である『世界最小の論考コンペ』を行う。学部生や院生、他大学からも出店を募るので奮ってご参加頂きたい。

 

(文責)SHU-MAI係 曾原翔太郎

 

【告知】

第132回(令和4年度第1回)

 

とき 4/27(水)17:00~

ところ 芝浦工業大学豊洲キャンパス教室棟506教室(オンライン参加も可)

 

オンラインミーティングのリンク先や、最新情報は、原田研究室公式インスタグラムで告知いたします。