Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

第76回 「何にもない」

テーマ「何にもない」
一等:山中森
講評:山中森

何にもないないという言葉から連想される物事がその言葉以上に何にもならず、手がかりをつかめないまま苦労したテーマでした。そんな中で「何にもない」の捉え方に共通する作品も多く見られました。それは、自分と他者でものの見え方、認知の仕方が異なるという視点です。自分が見えているものも他の人からしたら見えていないもの、他の人が見えているものも、自分には見えていないものを、見えていない、見えない、何にもないと置換していく方向性がありました。例としてあげられたのは、犬は本棚を壁として認知しているという話です。本棚の機能である本を置いておくものという目的を犬は持っていないため、それをただの壁と感じているのだそうです。そのため、ハエは、机や椅子すらも壁と認知しています。ここでは目的を持つもの、目的を持たないものではそのものの存在感が変化するという話でした。


自分の案は、物事がなくなった時に確認する方法として覗きこむ行為を経ていることを思い出しました。お菓子の袋を覗いたり、缶ジュースの飲み口から中の覗いたり。見えないものには、何もなく、見えるものはそこにある。そう割り切りました。そこで重要なのは光があるということ、さらに言うならば時間が存在していることです。光があることで物体を反射し、そのものの存在や空間を認知します。そこで私は、一見何にも見えない光のほとんど入っていかない穴の開いた箱に光を動かしながらそれを覗くことで、その中の空間の質が変化する箱を作りました。





何にもないということは、物事の存在を否定しているようでいて、さらに物事の存在を強めているということを「何にもない」をテーマに作り出したて覚えた感想です。

次回のテーマは「布団」です。

参加者:磯、大久保、小川、神崎、北口、九里、紺野、田畑、深津、藤本、山中