Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

第98回 「コンクリート」

今回のテーマ「コンクリート
一等:小泉菜摘
講評:小泉菜摘


 今年度最後のシューマイ、テーマは「コンクリート」です。「コンクリート」はセメント、水、細骨材、粗骨材からなります。これらの材料の割合を決定することを調合といい、この調合が「コンクリート」の性質を変化させます。
 コンクリートのイメージとして、冷たさや人工的、無機質などのワードが出てきました。そこに着目した案もありました。また流動体であった生コンが、型枠に入れられ固まってしまうことに死を感じるといった案もありました。



今回の一等、小泉の案



 「コンクリート」は骨材などの形や大きさの違う要素が一つにあつまって壁や床などを構成しています。また、その中には見た目からは想像できませんが水分が含まれています。透明のブロックのそれぞれは、壁や床といった、建物の構成要素を表しており、その中には水分を含んだポリマーが入っています。このボックスが、空間の構成要素になるように模型を作りました。
 コンクリートは木材などと違って無表情な素材です。そこに表情を与える方法の一つとして、光の入れ方があると思いました。窓やスリッドによって光をいれることでコンクリートの無機質な空間は温かみや美しさを得ます。このコンクリートと光の関係を表すためにも、光を透過したり反射することでキラキラと輝くポリマーをボックスの中に入れました。
 このように「コンクリート」の素材と光による空間の質について考え、模型にしました。


参加者:池田、安藤、三浦、岡本、小泉、堀場



 今まで何気なく使っている言葉やモノの本質を見つめること。そしてそれを空間にすること。
 半期を通して様々なテーマにそって空間を作ってきました。一つのテーマでも異なった考え方があり、それらについて議論することでより考えを深めていきました。このプロセスは、今後設計する上での基礎やヒントになるかもしれません。各々がなんらかのかたちで成果を得られたのではないでしょうか。


 2017年度のシューマイは以上になります。



17’HARADA Lab Members:堀場、安藤、池田、岡本、小泉、小池、児玉、杉山、中原、三浦

第97回 「放課後」

今回のテーマ「放課後」
一等:児玉美友紀
講評:小泉菜摘

 
 今回のテーマは「放課後」です。小学校や中学校などで授業が終わった後のことを「放課後」といいます。「放課後」は、授業からの開放感や、逆に部活などが始まることへの憂鬱な気持ちも持ち合わせています。
 「放課後」になると解放されるのは生徒だけではありません。授業が行われていた教室も同様に解放されます。生徒たちのいなくなった教室は、廃墟のようにみえるといった意見もありました。
 


今回の一等、児玉さんの案



 「放課後」は、始まりははっきりしていますが、終わりは明確ではありません。授業が終わり、帰りのホームルームが終了すれば、私たちの時間は「放課後」に突入します。模型の手前にある小さな扉の開いた壁を抜けることを「放課後」の始まりとしています。扉を抜けた先にはひらけた空間が待っており、「放課後」の開放感を思い起こさせます。幾つか立ち並ぶ透明の壁は、各々が感じる放課後の終わりです。部活が終わったら、放課後は終わりなのか。はたまた自宅に帰るまでが放課後なのか。終わりは人それぞれでありつつ、自分でもどこまでが放課後かは、明確にはわかりません。その曖昧さを透明の壁を使って表現しました。


 次回のテーマは「コンクリート」です。次回が今年最後のシューマイとなります。


参加者:杉山、児玉、小泉、安藤、堀場、池田、三浦

第96回 「熱帯夜」

今回のテーマ「熱帯夜」
一等:小池正夫
講評:小泉菜摘

 今回のテーマは熱帯夜です。日中の太陽の熱がアスファルトなどに吸収されて、夜になっても気温が25度を下回らないことを「熱帯夜」といいます。湿度によってベタベタしたり、不快感を覚えることも多い現象ですが、クーラーなどの機械に頼ることによって、私たちは暑さを忘れることもできます。



 今回の一等、小池さんの案




 「熱帯夜」の空気は水分をたくさん含んで、質量があるように感じます。この模型ではぼんやりした色のガラス同士が作り出す空気の層を重ねることによって、重く、中がもわっとしているように見せています。
 ガラスがぼんやりしていると、なんとなく水分を含んでいるように感じられます。目には見えないけれど、体は重みを感じる、とか、空気が水分を含んでいるようだ、という感覚は、考えてみるととても不思議でした。
 「熱帯夜」の湿度感をうまく表している作品でした。


 次回のテーマは「放課後」です。


参加者:小池、堀場、安藤、小泉、三浦、岡本、児玉

第95回 「星座」

今回のテーマ「星座」
一等:小泉菜摘
講評:小泉菜摘


 今回のテーマは、七夕ということで「星座」です。古代の人が星と星をつなぎ、そこに様々な物語を授けました。そして私たちは誕生日によって自分の「星座」を持っています。その「星座」を使った占いに、一喜一憂する人もいるでしょう。
 また、かつて星は天球上に張り付いていると思われていたため、昔と今の星空の認識を比べると、二次元と三次元という違いが見られます。そして、私たちが見ている星の光は、何光年も昔のものです。今見ている星は、本当は存在していない可能性もあります。



今回の一等、小泉の案



 「星座」は、星という点を、頭の中で線で結んだものと考えました。点と点を線で結ぶ。その法則に従って空間をつくっていきました。さらに、空は星座によって、地上でいう住所のように区分されています。それを表すために全体を四分割するようにそれぞれの空間を配置しました。
 星を繋ぐように、自由に結ばれた一つの塊は、出っ張ったり引っ込んだりすることで色々な場所性を持った空間を持っています。一つの領域の中で完結するものもあれば、赤と緑の二つに領域にまたがって生まれた空間もあり、コモンスペースとプライベートスペースが曖昧になっているようです。星座の作り方に則して空間をつくった案でした。


 次回のテーマは「熱帯夜」です。


参加者:中原、池田、児玉、堀場、三浦、小泉、岡本

第94回 「非常口」

今回のテーマ「非常口」
一等:小泉菜摘
講評:小泉菜摘


 今回のテーマは「非常口」です。普段何気なく生活していると、「非常口」を意識することはあまりありません。しかし、日常の中ではただの出入り口として空間の中に溶け込んでいても、実際に災害にあった時、私たちは非常口のサインを探して脱出を試みることになるでしょう。
 「非常口」は、必要に応じて開けられた出入り口に対し、人間が強引に「避難通路」としての意味を付け加えたものであると捉えたり、「非常口」といえば緑と白のピクトグラムが思い浮かぶと思いますが、そのなかで逃げようとしている緑の人物の、出て行った先の空間を模型にしたものもありました。



今回の一等、小泉の案




 災害時、「非常口」を出られれば生きて逃げられますが、出られなければ死が待ち受けています。図面上ではただの開口部に過ぎず、線として描かれる「非常口」ですが、空間にするために積分するように線に厚みを持たせてみると、「非常口」という空間は「生」と「死」の両方が混在する空間になるのではないかと考えました。模型として階段を上った先にあるボックスのなかが「非常口」という空間です。その中には今にも落ちそうな一本の細い道があるだけです。ここを無事にくぐり抜けられれば外に生きて帰ってくることができます。しかし一度落ちてしまえば死が待ち受けています。
 「非常口」という線的な要素を空間にしたことで、シュレディンガーの猫のボックスと同じような、実際ではあり得ない空間を発見することができました。
 

 次回のテーマは「星座」です。


参加者:堀場、三浦、小池、岡本、小泉、安藤
 

第93回 「手紙」

今回のテーマ「手紙」
一等:安藤祐次朗
講評:小泉菜摘


 今回のテーマは「手紙」です。「手紙」は書いた人の人となりが表れます。封筒や便せんを選ぶところから始め、文章の作り方や、切手にまで意識を配らせる人もいるでしょう。そうして「手紙」は完成します。また、一度出してしまったら取り返しがつきません。自分で書いたものなのに後から恥ずかしくなってしまったこともあるのではないでしょうか。そんな経験を模型にした案もありました。



今回の一等、安藤さんの案



 この案では「手紙」と「メール」の違いとして、「もらった時の温かみ」をあげています。「手紙」を書く時、相手のことを思って便せんを選んだり、文を考えたりします。そうして完成した「手紙」をポストに入れると、郵便局の人が収集、分類、配達してくれます。そうすると始めはただの紙切れだったものが、書いた人、届けた人などの手が加わることによって、だんだんと人の温もりを蓄えていきます。
 この模型では、書く人の前にある二次元的な紙が、相手に届くまでにだんだんと人の形になっていくのを表しています。それは無機的なものが、人の手によって有機的なものに変化していくようです。
 「手紙」はいろんな人の想いが詰まってはじめて相手に届くもの。そんな温かなストーリーが込められた案でした。


 次回のテーマは「非常口」です。


参加者:岡本、児玉、小泉、安藤、堀場、三浦、小池、中原