Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

134回「名称未設定。」

フライヤー制作:曾原翔太郎

【出展者一覧】

河本一樹|原田研究室B4

岩田理紗子|原田研究室B4 

川村寛樹|原田研究室B4

曾原翔太郎|原田研究室B4

東尚生|原田研究室B4

長谷川奈菜|原田研究室B4

末松拓海|芝浦工業大学建築学部B2

半田洋久|芝浦工業大学建築学部B2

細田雅人|芝浦工業大学建築学部B2

 

【課題文】

 第0回の課題文にある通り、我々学生は指導的立場に在る人々からの問に対し応えるのみである。このとき、学生は課題文と同時に制約を受け取る。制約は設計手法を知らない学生のための支援となり、思考のプロセスを誘導する役割があるのだ。

 
 世界で最も成功した美術館のひとつであるMoMAでは、絵画や彫刻だけでなく、写真、映画、建築にも独立したキュレーター部門を設け、多角的な展示を行っている。(引用 著:難波祐子『現代美術キュレーターという仕事』)この現実がある限り、建築は芸術の一分野に数えられてもおかしくは無い。しかし、先に挙げた5分野の中で「建築」だけ異質な存在である。建築のみが、初めから敷地条件や法規、クライアントの意向など、目を背けられない制約が存在し、まっさらなキャンバスを目にすることがないのだ。
 
「建築を学ぶ人は、制約がないときどのような作品を創るのだろう」
 
私は非常に興味がある。四半世紀も生きていない若人が、どのようなものを作るのかを。
 
 参加者に完全にまっさらな状態から作品を作って貰いたいが、それは「完全にまっさらな状態から作品を作ってください。」という制約を設けることになり、矛盾が生じる。そのパラドックスをできる限り回避すべく、参加者に「名称未設定とはどういうものなのか」ということを考えて頂きたい。
 
Illustratorを起動した時、最初のドキュメントは「名称未設定.ai」で保存される。大学生活の殆どを制約の元で過ごしてきた建築学生は、名称未設定の白いキャンバスをどう捉えるのだろうか?

(出題:曾原翔太郎)

 

課題

「名称未設定」というテーマのもと、任意のインストゥルメントに歌詞をつけよ。そして、完成した楽曲をビジュアル化せよ。

 

提出物

・インストゥルメントを聴くことのできる媒体(YouTubeのリンクやMP4など)

・歌詞カード(PDF、大きさの規定はない)

・ビジュアル化した作品(インスタレーションやドローイング、映像作品など形式は問わない。また、その作品には歌詞以外の説明文をつけてはならない。)

 

【出展作品】

今回、カメラの設定ミスで十分な品質の画像を用意できませんでした。ご了承ください。

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133回「ありえない世界で、ありそうな建築」

フライヤー制作:東尚生

 

【出展者一覧】
井筒悠斗|原田研究室B4
河本一樹|原田研究室B4
岩田理紗子|原田研究室B4
佐倉園実|原田研究室B4
川村寛樹|原田研究室B4
曾原翔太郎|原田研究室B4
東尚生|原田研究室B4
長谷川奈菜 | 原田研究室B4
加藤優作 | 猪熊研究室B4
有田俊介 | 猪熊研究室B4
波多剛広 | 原田研究室M2

 

コメンテーター:東龍太郎|原田研究室M2

【はじめに】

 建築学部原田研究室『SHU-MAI』は、原田研究室B4 生によって伝統的に開催される自主ゼミです。今回の「ありえない世界でありそうな建築」で通算 133 回目となりました。
 従来の SHU-MAI は、研究室内で完結する閉じたものとなっておりました。建築を学ぶ学生(とくに学部生)は、自己の作品が評価、議論される場が設計課題やコンペなどに限られています。そこで、今年度の SHU-MAI では、参加資格を学部生、院生、他大の学生に拡張し、さらに展示を行うことによってたくさんの目に触れることを期待することにしました。

 

【課題文】

 地震の絶えない国ニッポン。世界一海面の近い国ツバル。太陽の沈まない白夜が訪れる国フィンランド。水道も凍る都市ヤクーツク。世界を見渡してみると、まるでありえないような世界が数多く存在している。しかしながらこれらは、厳しい環境に対して対抗しながら自分たち独自の秩序を生み出し、人の営みを形成している。つまり、建築を考えるための手掛かりもまるで異なっているはずである。
 そこで、「今自分がいる世界に、ありえない一つの事象を与えてみる。」そのとき導かれる建築の形態、住まいの在り方はどんなものになるだろうか。
これは一種の思考実験である。自らの想像力を極限まで働かせ思考し、新しい世界を見せてもらいたい。

 

応募資格…所属大学や所属研究室、学年は問わない。
応募方法…原田研究室在籍以外の学生は、以下メールアドレスに応募する旨を伝えること。(担当者 dz19190@shibaura-it.ac.jp)
提出物…A3一枚以内。パース、ドローイング、模型、図面、ダイアグラム、説明文など、その設計意図・思考過程を表現するものを記載することが望ましい。

 

【作品紹介】*投票結果による上位三点のみ

 

最優秀賞

『永遠に夜の世界で』 岩田理紗子案

 太陽が昇るという概念の無い世界における住宅建築の提案である。アルミなどの反射素材による建築のファサードが、夜を映し夜に溶け込むような美的景観を形成し、その反射を受け止めたり、借景したりして、建築の形態として互いに呼応していくような街並みが計画された。
 現実の住宅建築においては、主に昼間の人の活動の場として建築が設えられることがほとんどであり、夜間には住まい手は内部で生活することが想定される。夜間における住宅の見え方は、多くの場合考慮されておらず、そこに違和感は無いようにも思える。
 しかし、岩田案ではこういった今までの慣習から脱した観点において、新しい建築を提示している。また、個人的な見解ではあるが、夜間に外で人のアクティビティが起こり、人の振る舞いが表出しているようなドローイングを見ると、夜を映し夜に溶け込むような美的景観の形成にとどまらず、都市や地区といった範囲で計画すれば現実で発生している人気の少ない夜間の危険性などの諸問題までも解決しうる都市計画の概念にまで拡張しうるかもしれない。

 

優秀賞

『小さくて大きい家』 川村寛樹案

 小人がいる世界における建築の概念の提案である。ここでは、誰もが知る前川國男邸の図面を、縮尺の分数を書き換えるという一つの操作のみで新たな発見を生むことはできないだろうか、ということが思考されている。
 芝浦工業大学建築学部SAコースでは、一年次に必ず全員が前川國男邸の図面のトレースを経験する。そのため、この作品を見た瞬間に、”S=1/100”という分数が頭に自然と浮かぶだろう。このスケールでこの図面を見ると、それは現実の人体スケールの「大きい」家である。しかし、この作品に最後まで目を通すと、“S=1/1”という分数が目に入る。このスケールで改めて図面を見返してみると、それは架空の小人スケールの「小さい」家に変わってしまうのだ。これは、中山英之の言う「小さくて大きいこと」(※1)に起因する概念であり、スケールのみを書き換えることは極限まで少ない操作で、建築の見え方を拡張することができるということを川村案では提言されたのではないだろうか。


※1 現代建築コンセプトシリーズ25『中山英之 | 1/1000000000』参照。中山英之は、建築の世界でのスケールを「魔法の分数」と呼び、この分数を唱えることで、私たちはいろいろな大きさの世界を頭のなかで自由に行き来することができると言われている。

 

優秀賞

『「時間」の概念が無い世界』 東尚生案

 「時間」の概念が無い世界における建築の在り方の提案である。この世界の建築の一例として砂丘の上にまたがる展望デッキが計画された。ここでは、地平線いっぱいに広がる砂、風が砂を巻き上げ、地表面のレベルは一定に保たれることはなく、デッキスラブと地表面の間には天井高が常に変化し続ける空間が生まれ、人は砂丘の特性によって規定された「場」を選択して過ごす在り方が考えられた。
 これは、時代が進んでテクノロジーが発達していくなかで、なんでもどこでもできるようになってきた現代において、「場」の重要性が失われつつあることへの批判精神から生まれたものである。しかしながら、「刻一刻と」という時間表現の語彙を用いていることや、時間によって空間が定義づけられてしまう「砂丘」という敷地を選定していることなどが議論の中で指摘された。これはもしかすると、結局人は「時間」から脱することはできない、「時間」の中でしか生きることはできないというアイロニーをこの作品は孕んでいるのかもしれない、と感じた。

 

【総評】

  まず今回は、他研究室や修士からの参加もあり、ヨコとタテの広がりをもったものとなりました。これは、研究室内にとどまらず議論の輪をさらに広げていこうという今年度のSHU-MAIにとっては着実に有意義なものとなっていると感じた。
 また、今回のコンペでは、現実世界に当然のように蔓延る事象を覆してみることで、建築の捉え方や枠組みを拡張することが図られた。建築の足掛かりが全くない状態から、各々の頭の中で世界を構築し、設計の手掛かりを掴んでいくという大変難しいテーマだったにも関わらず、熟考されたものを見ることができた。

 

文責:SHU-MAI係 東尚生

 

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132回「世界最小の論考コンペ」

 

フライヤー制作:河本一樹

【出展者一覧】
井筒悠斗|原田研究室B4
河本一樹|原田研究室B4
岩田理紗子|原田研究室B4
佐倉園実|原田研究室B4
川村寛樹|原田研究室B4
曾原翔太郎|原田研究室B4
東尚生|原田研究室B4
長谷川奈菜|原田研究室B4
末松拓海|芝浦工業大学建築学部B2
半田洋久|芝浦工業大学建築学部B2

 

コメンテーター|有田俊介|芝浦工業大学建築学部B4

 

 

【課題文】
 あなたにとっての建築を一文字で表してください。その一文字を選んだ説明や、模型で空間を表現するなどで可能ですが、必ず一文字を提出すること。


「あなたにとっての”建築”を一文字で表してください。」というコンペである。
一文字から考える。または、カタチを作ってから考えるという双方からインプット・アウトプットすることができる課題であった。シンプルながらにすごく難しい課題であったのではないかと思われる。一人一人の建築観を語り合うことができる課題であった。

 

応募資格 所属研究室や学年は問わない
出題期間 1週間
狙い 建築観の共有や議論、言語を空間化する。
提出物 フォーマット用紙に一文字を記入したもの、レタリングやフォント、大きさなど指定はない。補足の説明文は所定の範囲内に収めること。模型表現は 15×15×15cm 以内に収めること。

 

賞 最優秀賞 1 点 優秀賞 2 点

 


結果発表
1位「移」 東 尚生
2位「æ」 河本 一樹
3位「ケ」 井筒 悠斗

 

【最優秀賞】『移』


 建築において”移”ことはその語彙の意味からして、新陳代謝による更新性と不確定な時間の流れの中で生まれる潜在的な魅力を内包している。
”移”をシャボン玉でスタディし、境界の曖昧さ、周辺の写し込み、光の屈折による色の変化が時間変化と共に刻一刻と変化し、決して留まることがないということを表現している。

 

曾原「なぜ平面で?」
東「模型は無くなった。建築における新陳代謝を表現しているためこの時点で模型は存在していない。」
川村「3Dのスケッチのよう。あそび線のような潜在的な魅力を見つける方法としてシャボン玉を使うのはすごく面白いと思った。」
曾原「その場で実演すればよかった?」
東「規定違反かな?」
有田「泡は縦横無尽に自由に動いているイメージがあるがこの作品はその場に固定されある種移ろいを制限されているように見えるが、それは少しは秩序が必要であると考えているからなのか?」
東「曖昧さと必然性の両立を考えていて予測せずに大きさが変わり破裂するなど、本当は自然法則の中で起こっていること必然的なんだけど人はそれを予測できない魅力がある。」
岩田「長い時間をキュッと縮めた感じが面白い。移ろうは理想なのか?」
東「理想でもあるし、変わっていくこと自体が建築の魅力である。」

((((ここに脚注を書きます))))

シャボン玉という新しい材でスタディしているところが斬新だと思った。斬新でありながら東くん自身の建築観がうまく表現できており、一文字と写真がお互いに理解を深めるツールになっていた。彼は時間の流れの中で新陳代謝による滞ることのない変化が建築にあると言及し、確かに普遍ではないと思うが、建築だけではなく、この世の中に存在するもの全てがそうであるとも感じる。普遍であるように見えて角度を変えてみることで実際は変化し移ろう世界に私たちは存在し、その変化に気づけた人がこの世界の魅力に気づくのではないだろうか。

 

【優秀賞】『æ』



 建築は二面性を持つ相補性の存在である。建築は常に複数の事象が内在している。切妻屋根という歴史や環境によって作られた普遍的な形態に厚みをもった一つの軸線空間を引く。そのæの間、一体となった空間性に興味がある。また建築は”æ”のようにそれ単体では何の意味もなく、他の子音といったコンテクストがあることで意味を見出し、その先の存在へと思いを馳せることができるのではないか?


東「河本としてはartとengineerのカタチを作ったが、実際にはどっちも構造も効いてそうで効率的とも言えずデザインされている気がしている。」
河本「エンジニアリングの中にもデザインがあり、デザインの中にもエンジニアは存在していて、その間を作っってみたかった。」

東「両方の間にあるものと両方の間にあるものの間にある空間ってこと?」
河本「はい」
曾原「発音記号は国によって変わり、エンジニアやデザインも国によって変わるっていうことをどう思う?」
河本「その人によって発音記号に対する空間構成も変わってくると思う。」
2年「エンジニアリングの比重が大きい気がする。」
河本「もしかすると建築をちゃんと作ろうとすると自分の中では構築性が大事になっているのではないか?æという文字を建築に表そうとしたときにちゃんと構造を考えなければいけないのかなと考えたかもしれない。」
井筒「子音の方が言葉を構成する数が大きく、これだと限られた母音の”æ”の中でしか建築をしていないように感じる。この模型における子音は?」
河本「この模型に子音はなく、これをみた我々が思いを馳せ、想像力を働かせることで子音を生み出していく。」

 

 発音記号という変わった一文字が選出され、建築の二面性を記号で表していた。確かに建築においてエンジニアリングもデザインも切り離して考えることはできない。さらにエンジニアによって導き出されたデザインはデザインに合理性が生まれ、その合理性こそが受け入れられ、愛されて長く生き続けることができる建築なのではないかと考えた。

 


【佳作】『ケ』



 ハレとケのケを表していて、人は大通りの(模型の大通りにある複数の糸)ハレの部分に意識が行きがちであるが、多様な建物にかかっている上の糸を見るのが建築家の仕事だということを示した。


曾原「模型は都市っぽい。都市の考え方は?」
井筒「無国籍建築の反対派。都市の中の制約の中でいろいろなコンテクストを読み取りそこにある日常、ケにあたる部分を設計していく。」
2年「今の説明を効いていると建築家は部分を見ていればいいと聞こえるので行間を詳しくお願いします。」
井筒「前提として全体を考え、素晴らしい、美しいものを作るだけでなく、手に近いスケール感を大切にしていかなきゃいけないと考えている。全体をおろそかにしているわけではない。」
河本「それぞれの線が人の動線と電線に見えて日常生活では目を向けないようなところにも建築家は目を向けなければいけないのかなと模型を見て思った。」
川村「言葉を表す建築を作るっていう方が強い?」
井筒「はい」


 言葉選びがハイセンスな井筒くんの作品は詩が付属されており、スタディー形態はシンプルに言葉を表していた。途中質問で彼の建築観について言及されていたが、その場所の制約の中で読み取ったコンテクストを最大限に扱うことが建築の仕事であると感じた。

 

【総評】
 それぞれの建築観がお互いにわかった回であった。1回目のshu-maiであったためこの時は気づくことができなかったが、実際に原田研4年の8人の卒業制作のゼミにおいてもこの回のそれぞれの建築観がそれぞれ8人の根底にあることを日を追うごとにとても感じている。この一文字コンペがあったからこそお互いに建築に対する考え方の理解が深まり、改めてこのコンペの面白さを見出すことができた。

文責:SHU-MAI係 長谷川奈菜

 

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131回「コンペをコンペする」

 

出題:河本一樹
フライヤー制作:曾原翔太郎

はじめに

 原田研究室B4生によるゼミ「SHU-MAI」。令和4年度の初回は、SHU-MAIのあり方を見直す意味も含め、『第0回』として開催されました。今年度は研究室内にとどまらず、他学年や他大学からも出展を募ります。

 

 

【出展者一覧】

井筒悠斗|原田研究室B4

河本一樹|原田研究室B4

岩田理紗子|原田研究室B4

佐倉園実|原田研究室B4

川村寛樹|原田研究室B4

曾原翔太郎|原田研究室B4

東尚生|原田研究室B4

長谷川奈菜|原田研究室B4

末松拓海|芝浦工業大学建築学部B2

半田洋久|芝浦工業大学建築学部B2

 

課題文

 あなたが建築学生ならば、設計課題やコンペに参加したことがあるに違いない。審査委員の出題から議論が始まる『コンペティション』。参加者は、出題をもとに議論しながら作品を創り、後に審査委員が議論して優秀者を選定する。そして、受賞者が決定したあとも世間ではさらなる議論が起こるだろう。審査委員を務めるような有名建築家でない学生たちは、このような、フラクタル状(※1)に発展する議論の起点になった経験があるのだろうか—。

 原田研究室SHU-MAIでは、研究室や学年を横断し、誰もが「出題者」になることができる。つまり、あなたの考える「コンペ」が第1回以降のSHU-MAIのテーマになるのだ。(無論、出題者も今後のSHU-MAIにも参加可能)

 吉田素文氏(※2)は、議論の方向づけには「広げる、深める、止める、纏める」の4つに影響されると主張している。これらが理解されないまま議論が進むと、まるでロマネスコのつぼみ(※3)のようにあらゆる方向に枝分かれしてしまう。議論がまとまって進むためには、参加者の議論に依存するばかりでなく、取り組みやすいテーマや出題方法も考える必要がある。あなたはどのような空間や議論を求めてコンペを出題するのか、様々なテーマを募ることとする。

 

※1 フランスの数学者ブノワ・マンデルブロが導入した幾何学の概念。図形の部分と全体が自己相似になっているもの。野菜のロマネスコブロッコリーフラクタルの性質を持っている。
※2 グロービス経営大学院教員。インタラクティブな経営教育の方法論を専門としている。企業での経営者育成、シニアマネジメント向けプログラムの設計なども行っている。
※3 ロマネスコのつぼみ部分は、自己相似の幾何学を持ち合わせている。

 

応募資格…所属研究室や学年は問わない。
応募方法…原田研究室在籍以外の学生は、4/19 火曜日までに以下メールアドレスに応募する旨を伝えること。( 担当者 dz19185@shibaura-it.ac.jp)
提出物…出題者の学籍番号・氏名。従来のSHU-MAI のようにテーマを言語化する必要は無いが、その狙いは言語化すること。ある音楽や絵画の空間化を課題と
するなど自由である。ただし、議論が成立するテーマを設定すること。課題の制約として模型や提出用紙などの大きさなど提出方法のフォーマットを指定すること。
課題要綱…A4 サイズのフライヤーを印刷して提出すること。紙質は問わず、立体的な表現も可。その他、追加で任意のフォーマットのものを提出してもよい。
提出方法…ゼミ日までに完成させればよい。オンライン対応のため、以下のメールアドレスにPDF でも提出すること。( 担当者 dz19185@shibaura-it.ac.jp)
優秀作品は、第1 回以降のSHU-MAI で題材にされる。該当回は、必ず講評会に参加できるようにすること。

 

【最優秀賞】

河本一樹案

 論考コンペから着想を得た『世界最小の論考コンペ』。1週間で取り組みやすいシンプルな内容となっているが、1文字に到達するまでのプロセスや最終的な表現方法には幅広い選択肢がある。たとえば、個人が持っている建築観から1文字を選択し、それをモンタージュする方法があれば、対照的にフィジカルな作品を制作してからそれに当てはまる1文字を探す方法もある。単純に文字を選択するにしても、文字に介在する意味、タイポグラフィに隠れる含意、文字の文化的背景など基準は数多く存在するだろう。

 少ない情報から数多の案が出展され、より活発な議論が生まれることが期待されるため最優秀作品として選出された。なお、この案は次回132回SHU-MAIの課題となる予定だ。

 

【優秀賞】

末松拓海案

 今年の4/1から、「うまい棒」が10円から12円に値上げされた。末松さんは、日本を代表する銘菓が国民に愛されているのは、大量生産が要因だと考察した。

 彼は、建築家が大量生産から逃げている問題を指摘しており、今よりも大量生産と向き合うべきではないかと主張している。

 プレゼン後の講評では懐疑的な意見が多く出た。東さんは、建築家が大量生産を悪としているのは現代からであり、ル・コルビジェのドミノシステムはそれが起点となって大量生産が可能になり評価されたと意見した。それに対し出題者は、「現代の非無個性な大量生産を考えてほしい」と返答した。

 この案は議論が最も白熱したひとつであり、議論の内容が結果に影響したのだろう。さて、現代の魅力的な大量生産とはいったいどんなものなのだろうか?

 

【佳作】

佳作は同数票が集まり2案となった。

 

佐倉園実案

 「つつむ」という行為が『つつむもの』と『つつまれるもの』という対照を生むという点にフォーカスした出題である。例えば、フランク・ロイド・ライトのプレーリースタイルは、それまで四角い箱で包まれた空間に革命を起こすべく「包み方」を変えた。

 単に「つつむ」と言うと暖かみを連想するが、「包囲する」という言い方をすれば意味は変わらずとも印象が変わる。この提案は、空間のあり方に直結するような課題であるとともに十人十色の「つつみ方」が期待できることから、佳作に選定された。

半田洋久案

 半田さんは、原田研究室が「建築家になりたい人が入る研究室だ」という噂を耳にしたことから、この出題を考案したそうだ。建築家は思想を持っている。あるひとつの学問を学び続けるとそれぞれの思想が生まれる。ただその思想は、本当に求められているのだろうか?

 彼は、1年間建築を学び自分が民衆とずれていることに気付いたと言う。そこで、建築学に触れてこなかった建築に無縁で無関心な家族のために住宅を設計することを要求した。

 議論のなかでは、テーマと求めていることが矛盾している点などが指摘されたが、4年生で失ってしまったフレッシュな考え方を実践できる出題であったことから佳作に選定された。

 

【総評】

 今年度のSHU-MAIは昨年度までと大きく傾向を変えたため、議論が充実するか一抹の不安があったが、各々の出題に参加者の色が出ていて大変興味深いものとなった。普段出題される側にいる学生たちが、出題する側に立つ。今年度第0回SHU-MAIは、自身の設計活動を活性化させるため、見つめなおすための良いアクセントになっただろう。

 また、今回は2年生から2名参加していただいた。彼らの案は、ほかの発案者と異なった視点の出題であり、原田研究室B4以外からも出展を募ったことが成功しているといえる。

 

 次回、132回SHU-MAIは、今回の最優秀作品である『世界最小の論考コンペ』を行う。学部生や院生、他大学からも出店を募るので奮ってご参加頂きたい。

 

(文責)SHU-MAI係 曾原翔太郎

 

【告知】

第132回(令和4年度第1回)

 

とき 4/27(水)17:00~

ところ 芝浦工業大学豊洲キャンパス教室棟506教室(オンライン参加も可)

 

オンラインミーティングのリンク先や、最新情報は、原田研究室公式インスタグラムで告知いたします。

130回「プレゼント」

令和二年度原田真宏研究室B4によるSHU-MAI第7回目を迎える。

 

今回のテーマは「プレゼント」

誕生日やクリスマスなどきれいに包装された包みを解いていくその行為は誰もがワクワクするだろう。中に込められた対象と同等に開けていく様は喜びがあるだろう。

反対に、渡す側の気持ちも想像できるだろう。渡す相手によって商品を選び、そして悩む。そのドキドキ感も「プレゼント」と言えるだろう。

各々が20数年で経験した「プレゼント」を空間化することを期待した。

 

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最優秀案は安藤案

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『その先』

「プレゼントというワードには喜びの感情が当てはまるが、渡す側の視点に立つと、その行先までの道のりは喜びの「わくわく」と共に、不安、ストレスがかかるものである。
また、受け取る相手との関係性、どれだけ相手のことを知っているかなど、その深さによってプレゼントの価値(思考する濃さ)が定まるのではないか。まさに勇気を出して飛び込む思いである。
相手との関係を層として置き換え、生まれる洞窟をその先の見えない不安や恐れの表れとして空間化させた。
洞窟に対して、物怖じしたくなる感情を抱きながらも、その先にあるかもしれない笑顔を見るために暗闇の中に飛び込んでいく。」

 

 

講評

プレゼントを考えるべき条件を層として重ね、相手を思う気持ちを深さで表現した案。この深さに黒いスプレーで着色がされ、相手の反応を不安視する不安定な状態が表された。模型の表現から、プレゼントをあげる立場として、ネガティブな印象が受け取れる。このプレゼントをあげる相手は、上司や社長など目上の立場がある人なのだろうか。と推測する所から議論が生まれた。様々な不安要素の中でプレゼントを選ぶが、その模型の奥には薄らと明かりが見え、相手が喜ぶ期待もあったのではないか。

 

総評

今回出展された案は大きく二つに分類できる。

一つはプレゼントを渡す、もしくは受け取るときの感情に着目した案。渡す相手の反応を想像することで生じるドキドキや不安といった感情。反対に受け取ることの喜びや心躍る様子を模型に落とし込む案などが見られた。

二つ目はプレゼントの包装を解く動作を表した案。リボンをプレゼントの具体的要素と捉え、リボンが渡す人と受け取る人を結ぶ。プレゼントが介する関係性に注目した案として意外性を感じた。

プレゼントが与える”喜び”とは、包まれた中身に秘められているのではなく、美しく包まれたその形態とそれらをほどいていく行為から生じる感情であるのだろう。

 

7月21日「油」

出案者:粟竹、安藤、近藤、鈴木、前田

 

文責(講評):粟竹

文責(総評):安藤

129回「筋肉」

令和二年度原田真宏研究室B4によるSHU-MAI第6回目を迎える。

今回のテーマは「筋肉」

皮膚に一番近い構造体、「筋肉」について考えた。

 

最優秀賞は、鈴木案 。


 

『筋肥大』

 

「トレーニングなどの負荷によって傷つけられた筋繊維は、超回復によって修復される際に大きく成長する。つまり、筋肉は破壊と修復の繰り返しによって肥大化する。
ここでは、建築の壁が一部破壊され、それを修復するように新しい壁が覆い被さり、その繰り返しによって空間が広がっていく。
また、筋繊維が筋原繊維という軸の秩序に従って肥大していくように、この建築では中央通路が秩序となり空間が肥大化していく。」

 

講評

建築を過度に利用することは、空間もしくは部材の老朽化につながる。その欠損と修復の繰り返しは、筋力トレーニングという行為と似ていると考えられる。しかし、筋肉は超回復という現象により破壊前より強度と大きさが増すという点において、単なる建築の修復とは異なる。
建築における従来の補修を単に元に戻そうとする力だとしたとき、この提案における補修とは、元の状態からアップグレードしようとする力である。
筋力トレーニングによる超回復に視点を置いた案は他にも見られたが、この案はそのモデルをわかりやすく表現した点で評価された。

 

 

総評

出展された案は大きく三つに部類分けできる。一つ目は、破壊と修復という筋肉の性質を利用した案。二つ目は、筋肉の緊張と緩和の動作を現した案。三つ目は、目には見えない筋肉自体の静的な力関係を構造として再現した案。どれも筋肉のもつ性質をよく考察し、設計されていた。
筋肉の動的な構造関係を、建築の静的な構造にいかに落とし込んでいるのかが議論の主題となった。

次回:7月7日「プレゼント」

出案者:粟竹、安藤、近藤、柴垣、鈴木、中村、前田
文責:秋本、安藤

128回「気まずさ」

令和二年度原田真宏研究室B4によるSHU-MAI第5回目を迎える。

 

今回のテーマは「気まずさ」

曖昧な気持ち「気まずさ」は、脳が作り出す他の感情と何か違う。どこか「心地よさ」の対極にありそうなこの感情は、少し複雑な構造をしているように思える。

 

 

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最優秀案は秋本案。

 

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『筒抜け』

「話が続かない、見たい本の前の人、家族団らんでの下ネタ番組、遠くで聞こえる自分の噂話。人が同じ空間にいる他人への浸食を余儀なくされる環境またその可能性を感じる場におかれることで我々は「気まずさ」を感じる。本作品はポストの投函の音が、玄関での噂話が、風呂でする鼻歌が、ソファでする笑う声が、ベッドでのいびきが、庭での独り言が、トイレでの排泄音が響き渡る住宅である。自身が出す生活音が楕円壁に反射してその奥のある点に向かっていく。その先に人がいてもいなくても、壁の向こう側の支障をきたしているであろう人の存在を感じてしまう。」

 

 

講評

今回は気不味い体験を引き起こす建築空間を模型で表現した案が多かった。最優秀の秋本案では、家の中の生活音が楕円壁によって反響することで全ての活動が家族に筒抜けの住宅が、抽象的な模型で表現されている。反響する部分としない部分が平面的に考えられており、全ての部屋で反響音が生まれるように壁の角度が計算されていた。その結果、視覚的には外部と内部、諸室がそれぞれ区切られながらも、聴覚的にはひと続きになった住宅が作られている。キッチンでご飯を作る音や、リビングでの家族団欒の声は聞こえても良いかもしれないが、トイレの音や、自室での電話の声まで家中に聞こえてしまうのは、ものすごく恥ずかしいし、気まずいだろう。いかに”音”が私たちの空間体験に影響しているかに気付かされる提案だった。

 

 

総評
今回の課題では、全員が「自分と相手の間に生じる認識のずれ」が「気まずさ」であるという見解のもと設計をしていた。また作品は「そこにいる人々の気まずさ」を表現したものと、「気まずいという概念そのもの」を表現したものの大きく2種類に分かれていた。講評では「気まずさ」の具体的な体験談とそれに関する建築の構成についてが主題となった。

海外を一人で歩くとき、自分自身が風景から少し浮いている感覚に楽しさを覚える。目新しい文化の中に異質な自分がいる「ソワソワ感」は浮世離れすることに対する「気まずさ」に少し似ているように感じられた。

 

6月23日「筋肉」

 

出案者:秋本、近藤、柴垣、鈴木、前田

 

文責(講評):粟竹

文責(総評):秋本