Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

128回「気まずさ」

令和二年度原田真宏研究室B4によるSHU-MAI第5回目を迎える。

 

今回のテーマは「気まずさ」

曖昧な気持ち「気まずさ」は、脳が作り出す他の感情と何か違う。どこか「心地よさ」の対極にありそうなこの感情は、少し複雑な構造をしているように思える。

 

 

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最優秀案は秋本案。

 

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『筒抜け』

「話が続かない、見たい本の前の人、家族団らんでの下ネタ番組、遠くで聞こえる自分の噂話。人が同じ空間にいる他人への浸食を余儀なくされる環境またその可能性を感じる場におかれることで我々は「気まずさ」を感じる。本作品はポストの投函の音が、玄関での噂話が、風呂でする鼻歌が、ソファでする笑う声が、ベッドでのいびきが、庭での独り言が、トイレでの排泄音が響き渡る住宅である。自身が出す生活音が楕円壁に反射してその奥のある点に向かっていく。その先に人がいてもいなくても、壁の向こう側の支障をきたしているであろう人の存在を感じてしまう。」

 

 

講評

今回は気不味い体験を引き起こす建築空間を模型で表現した案が多かった。最優秀の秋本案では、家の中の生活音が楕円壁によって反響することで全ての活動が家族に筒抜けの住宅が、抽象的な模型で表現されている。反響する部分としない部分が平面的に考えられており、全ての部屋で反響音が生まれるように壁の角度が計算されていた。その結果、視覚的には外部と内部、諸室がそれぞれ区切られながらも、聴覚的にはひと続きになった住宅が作られている。キッチンでご飯を作る音や、リビングでの家族団欒の声は聞こえても良いかもしれないが、トイレの音や、自室での電話の声まで家中に聞こえてしまうのは、ものすごく恥ずかしいし、気まずいだろう。いかに”音”が私たちの空間体験に影響しているかに気付かされる提案だった。

 

 

総評
今回の課題では、全員が「自分と相手の間に生じる認識のずれ」が「気まずさ」であるという見解のもと設計をしていた。また作品は「そこにいる人々の気まずさ」を表現したものと、「気まずいという概念そのもの」を表現したものの大きく2種類に分かれていた。講評では「気まずさ」の具体的な体験談とそれに関する建築の構成についてが主題となった。

海外を一人で歩くとき、自分自身が風景から少し浮いている感覚に楽しさを覚える。目新しい文化の中に異質な自分がいる「ソワソワ感」は浮世離れすることに対する「気まずさ」に少し似ているように感じられた。

 

6月23日「筋肉」

 

出案者:秋本、近藤、柴垣、鈴木、前田

 

文責(講評):粟竹

文責(総評):秋本