令和二年度原田真宏研究室B4によるSHU-MAI第4回目を迎える。
今回のテーマは「夏」
一足早いテーマではあるが、季節の中で思い出が多いのは「夏だ!」という安直な理由から決まった。
描写しやすい具体性があるからこそ難しいテーマであったと思う。「夏」から連想して空間に結びつけて設計するのか、「夏」という概念から読み取って設計するのか、各々の思い出が異なるからこそ多様な議論が生まれることを期待した。
最優秀案は鈴木案。
『蝉時雨』
「 蝉の声、風鈴の音色、グラスの氷が解ける音、海辺の波音、花火があがる音、夕立の雨音。
夏の情景を思い描くとき、風景と同時に音を想像することがよくある。今回は暑い夏の日に蝉がうるさく鳴いている情景を建築で描いてみる。蝉の声は波形で表すことができ、その一部を空間へと変換する。ノイズのようなイメージを呼び起こす壁と青々とした木々によって蝉時雨の空間をつくりだす。 」
講評
夏を音の空間で表現した点が票を集める大きな要因となった。
しかしノイズとなった蝉時雨の中に彼が見出した建築の形は、至って単調で、規則的であった。降り注ぐ蝉の声に我々は本当に規則を見出すことはできるのだろうか。
講評では壁材、床材、屋根材、家具にまで議論は広がり、様々な話題に繋がる点でより深い議論を生む結果となった。
総評
作品を通して、それぞれの夏の思い出や視点の違いが浮き彫りになる一方、細かい部分には夏に対する身体的な共通認識を見てとることもでき、白熱した議論を生んだ。少しずつ近づいてくる夏の足音に耳を傾けながら、各々がこだわりのある感性を発揮した課題であった。
6月9日 「気まずさ」
出案者:安藤、近藤、柴垣、鈴木
文責:安藤