Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

137回「3」

令和五年度原田真宏研究室B4によるSHU-MAI第1回目を迎える。

今回のテーマは「3」である。

【飯泉案】

「どっちがおもい?」

他者に、社会に、 世界に、 我々は時々モノとモノの価値を天秤に掛けさせられたり、天秤に掛けている姿を見せつけられることがある。
一見ハッキリと価値の重さの違いを示している天秤も中間に立って二つの点の均衡を量ろうとしてる第三の点が時には両端の関係を操作していることもあるのではないか。
目の前に用意されたその天秤は本当に貴方にとって正しい価値を重れているのか?

 

 

 



【井浦案】

「三人称」

私があなたと話しているとき、私は彼らをどう見ているだろう?あなたは彼らをどう見ているだろう。「彼にはもうこんなに・・・」 「彼女にはまだ全然・・」 「彼には・・・」 彼らとの間には壁があって、穴を通して私とあなたは彼らを眺めている。
三人称は二人称との会話で生じる。一人称同士を中心に置き、周りの三人称一人一人に 対する私的な開示度合いを空間化し、交わらせることで、プライベートを始点としたパ ブリックな空間を構築する。

 

 


【鈴木案】

「(3,3,3) 」

「空間」とは、3次元の広がりである。0、 1、2次元に描かれた点、線、面が繋がり「空間」が浮かび上がる。この作品は、人間が描く2次元座標上の図が、実際に持ち上がり、3 次元座標上に空間として現れた様子を表現した。また、重力という制約の中で、人間が3次元の表現が困難であるということの隠喩でもある。空間を思考するSHU-MAIを始めるにあたり、空間について分析した。

 

 

【服部案】

 

『不安定さ 】

例えば、友達に 「3」 とだけ言い残して去られたらどうだろう。 きっとあなたは、何が「3」 だったのか、 気になって夜も眠れない。
「3」は普通、「第3回」「3.14...」など他から支えられて初めて意味のカタチが見えてくる。それ自体は不安定だ。そして、その不安定さが 「3」を attractive にしている。
この物体は他の物体との関係性によって違った空間を形作る。 その物体は屋根になるし、床になる。その不安定さは人々を惹きつけるかもしれない。

 

 

 


【中西案】

「かた」

何かを思考するとき、 三段階に分けて整理して考えてきた。 建築を三段階で考えるとき、 か、かたかたちで考えてきた。 これを分解する。 か、 はテキストで抽象的なものなの で二次元。 かたち、 は最終的にできた3次元の成果物のことだと思う。 しかし、 かた とはなんだろう。 かたは、 寸法がはいっていない、 汎用性のある設計手法のことだと考 えて、 可変性を持たせたものとした。 実際に入る機能などか、 に対応した形をとるもの になる。

 

 

【松野案】

「"3" 歩目」

人が持つ同じ器官は2が最大であるが、 歩行はその2を繰り返すことで3.4と拡大する。 歩行において、3、つまり3歩目とは、必ず1歩目と同じ足であり、繰り返しの初めの 数字であり、 私たちはその1歩目と3歩目の感覚を比較し、環境を相対的に理解している。 一様の傾斜の斜面を仮定し、 そこに1歩幅分およそ700mmの2次関数の斜面を挿入し た空間は一歩だけ感覚が異なり、次第にあの辺りにあるおかしな地面と名付けられる。

 

 

 


【江口案】

「補足」

人の身体は大抵1又は2の臓器や四肢から成り立つ。 人が3で成立するのはどんな時か。 思い浮かぶのは 「朝は四本足、 昼は二本足、 夕は三本足。 この生き物は何か」というギ リシャ神話のなぞなぞである。答えは人で、「夕は3本足」 は杖をつく老人を表す。しか し杖は身体の一部ではなく補われた足である。つまり不安定な自然状態+人工的なもの =3で夕の人が成立している。そこで夕における人の状態=「3」を光によって表現する。

 


【町田案】

「単位の定義」

3とは 空間における最小単位である。

3点を結ぶと、平面になる。 3人いると、社会になる。 3色集めると、全ての光になる。 ただ、最小単位なのに1ではない。
つまり、固定概念として存在する最小単位にまで分解しても、空間の原点には辿り着かない。
よって、空間構築においては、「3」の中に自ら「1」 という原点を見出し、定義する必要がある


【総評】

ある1つの「言葉」から8人がそれぞれ「空間」を表現し、そして他人と比較することで自分の芯が見えてくるという仮説の元発足した2023年度SHU-MAI。

初回テーマとして「3」が選ばれたが、「3人称」「3次元」「3段階」など、予想通り予想以上に多様な捉え方が見られた。町田案では、世の中の普遍的な原理、社会の”総意のようなもの”、個々人の中にある原点のそれぞれの関係性とその表現が議論となった。松野案と江口案は共に人間の身体的な感覚に注目し、「3=2+1」と捉えた点で共通していた。鈴木案は、建築の空間と図面表現の関係性をよく表しているとして共感を呼んだ。

私たちはSHU-MAIを「筋トレ」に例えている。毎回他人との比較を通じて自分の体を見つめ直し、今後どこを鍛えたいか、そのためのトレーニング方法を模索する。

今回の議論を踏まえて、次回はよりカタチでの表現力をトレーニングすべく、提出時に文章を隠してみることにした。そうすることで受け手はカタチの奥にある作者の言葉を推測することとなるが、それは建築体験にも通ずるところがある。

このような「筋トレ」の積み重ねが私たち8人の「動き」をどう変えていくのだろうか。もしよろしければ、観察してみてほしい。

(文責:服部)



【次回:第138回】

テーマ:「感染」
最終成果物:文章(200字以内、提出時は隠すこと)+200mm角以内の模型

 

(文責:服部、中西)