Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

136回「夢のよう」

フライヤー制作:岩田理紗子

【出展者一覧】

井筒悠斗|原田研究室B4

河本一樹|原田研究室B4

岩田理紗子|原田研究室B4

佐倉園実|原田研究室B4

川村寛樹|原田研究室B4

曾原翔太郎|原田研究室B4

東尚生|原田研究室B4

長谷川奈菜|原田研究室B4

上柳翔汰|UAコースB2

 

 

【課題文】

 

夢【ゆめ】

睡眠中に体験される感覚性の心像で、そのほとんどは視覚的心像によって占められている。しかし聴覚、嗅覚、味覚、触覚、運動感覚などにかかわる夢が現れることもある。(日本大百科全書

 

夢の中では、ありえないことがさも当たり前であるかのように起こる。しかし、夢の中の私たちはそれらを当たり前のように受け入れている。

 

 夢について再考してみると、その「ありえなさ」に魅力があるように思える。目が覚めていると信じられない事柄が、夢の中では自然と信じられる。そこで。夢の中のような空間を現実で表してみるとどのようなものになるのだろうか?現実ではありえないと感じるような素っ頓狂な状況を実際に体験するとき、それは一体どのような空間であるのか考えてみたい。

(出題:岩田理紗子)

 

成果物:自由。夢についての自身の定義や思想が解るものであれば、模型でもスケッチでも図面でも可。

応募資格:所属研究室や学年は問わない。

 

 

【出展作品】

 

『「揮発性小説ポエム『サイダー』」』井筒悠斗

ポエムを一部紹介する。

 

親知らず

 ほっぺたが痛むから今日はお粥にしようかしら。東京に出てきてもう六年。子供の頃はあんなに話したがりだったのに、最近はニュースなんて何にもなくて。「ほんとに親知らずだね」なんて心で反芻するけれど、番号を押すのは手が重たい。思い出した母の顔は少し若くて、すこしぼやけてる。火照るほっぺに片手をおいてプルルルル「ねえ聞いて、今日ね。

2022/06/23 井筒悠斗

 

コンビニ

 目の前のことはほったらかしでいつも何かを考えてしまうようになった。無意識に立って近くのコンビニで甘いものを手に取る。今日の自分に点数をつけるなら、このスイーツはいくらか加点になるだろうか。何かと便利になったけど不器用な僕たちは原始時代から何も変わっちゃいない。いつか今日も歴史と呼ばれるから、明日はせめて六十点をとろう。

2022/06/24 井筒悠斗

 

『無何有』河本一樹

 どこかわからない。一面に水が張り巡らされているなかで、目の前に古びた長屋と傾いた鳥居だけがぽつんとそこにあった。あの長屋は何なのだろう。もともと祠だったんだろうか。

 目が覚めたら涙を流していた。どうして泣いていたのか思い出せない。この夢を忘れないうちにスケッチしておく。そしてSHUMAIでみんなにどうして泣いていたのか考えてもらうのだった。

『in my head』岩田理紗子

 

入口がありません。気が付いたらそこにいました。

作品が壁じゅうにあります。

人が自分しかいません。

なぜか池があります。

池から女神が出てきました。お水をくれました。

女神が何かを話しているが全く聞こえません。

出口がないのでずっとそこにいてしまいます。

女神に出口を聞くと、道があらわれました。

しかし、なぜだか進んでももとに戻ってきます。

ここはどこなのか、私はどこにいるのかわかりません。

岩田理紗子

 

『不可逆的記憶』佐倉園実

  夢の中では真面目にその世界を「今」として生きている。目が覚めて夢を振り返ると、断片的な情景が浮かぶのみで、もやがかかったように見えない空虚感に襲われる。

 そして現実の世界ではありえないことが起こっていたことを知る。知り合うはずがない小学校の時の友達と、大学の友達の仲が良かったりmものすごく細かいところに夢の中では執拗にこだわっていたり。

 そして、夢から覚めて時間が経つほど夢は朧げになって思い出せなくなる。

 なんで朝起きたとき泣いていたのか、何が悲しかったのか、苦しかったのか。

 二度と訪れない「今」を夢の中で生きたことを自覚する。

 

『襲い掛かる現実』川村寛

 筆に絵具を付けて紙に落とした。青とベージュで満たされた画面は砂浜のようにみえたが、赤い点は何に見えるだろうか?

 筆が勝手に作ったいびつな形の点。鳥にも見える。だれかが落としていった帽子にも見える。

 

『Murder』曾原翔太郎

 夢で絶望した体験を歌にした。その時見た夢は忘れたいくらい残酷なものであったが、この残酷な気持ちは大切にしなければならない。そう感じた。

 氷はあのときの夢を表現している。時間とともに記憶からは消えていく夢。雪国では雪を解かすのに塩をかけるらしい。残酷な感情を消したいのでこの氷に塩をかける。

 でも、この何とも言えない気持ちは忘れたくないかもしれない。忘れたくない部分だけ残しておくために、氷に湯煎したチョコレートをかけた。チョコレートは固まった後形を変えなかった。

 

友情を壊した
中3の高架下
心に放火した
あの日見た夢ここに書いた

昨年2月、死んだバァバ
泣きながら持たせたバーナー
目の前で生きたまま
胸糞悪い、夢の中のMurder

覚えてますか燃えた肌の色を
赤でも黒でもない頭に残る
軽トラックに乗せた焼死体
もう見ない。興味無い。

握りしめてる軽トラのキー
今に忘れたい憂いとあの日
もう終わりでいいから Put gun on me
X(xxxtentation)が言ってるようにFuck on me

Don't remind me.
Don't remind me.
Nobody notice anyway.
I'm gonna forget anyway.

『夢知覚』東尚生

 人は案外「自由意志」で行動していない。社会、文化、階段、慣習といった目に見えないものによって影響され、行動している。さらには、そのことに対して大半の人は「無自覚」なのである。

 

 この二週間、自分の見た夢を起きてすぐ記録していた。そして気づいたこととは、見る夢にはかなり偏りがあったということだ。それは、ホラーやサスペンスなストーリー展開であったり、登場人物が知り合いだったりすることである。中には記憶の片隅に残っている程の昔の友人だったりする。もちろんそんな夢は見たいわけではない。けど、自分と相関性のあるモノやコトが夢の中では現れる。

 

 そして、「夢は、実は自分に潜在している”無自覚な領域”なのではないか」おということを、この時知覚した。このことを利用して、”無自覚な領域”を夢として知覚することで、現実世界でも自分の”無自覚”を知覚し、より”自由意志”で行動できるかもしれない。

『あれ?』長谷川奈菜

 

窓から見えた景色。景色から思うにこんな建物(右)に私はいるのだろう。

夢から覚めた。あれ、私がいた建物はあんな建物(左)だったんだ。

 

『、、、ん?』上柳翔汰


おかしい。古い友人と今の友人の仲がいい。

、、、ん?家のトイレのドアを開けたのに、扉の向こうには大学の教室がある。

 

アクエリアスにポカリのラベル。プロ野球チップスのカードの封を開けると出てきたのはポケモンカード

 

【総評】

 自分が見た夢をそのまま作品に落とし込んだ河本案、曾原案に対して、ほかの7人の案「夢」という概念を形態に落とし込んでいる。後者のなかでも、岩田案はまるで自分が見た夢であるかのような作品だ。

 また、ゼミでは夢を見るときの現象について共感しあった。互いに知り合っていないはずの友人たちが同じ場所にいたり、ワープするなど。対照的に、人によって体験したことのない夢もあった。たとえば、ホラーやSFといった現実ではありえない夢を見る人と見ない人がいる。

 夢は、それぞれの体験や記憶が適当に紡がれてひとつのストーリーを生み出す。今回のゼミでは、皆各々の体験や記憶がまったく異なることが如実に現れていた。

 

文責:曾原翔太郎