今回のテーマ「水中」
一等:加藤陽光、柴田敏樹
講評:平井悠大
2018年度第二回目のシューマイを行いました。テーマは「水中」、前回「宇宙」に続く極限環境を想起させます。
プカプカ浮かんだり、サンゴ礁であったり、レジャーとしての水中の印象からくるポジティブな作品が傾向としてはじめ想起されましたが、集まったほぼ全ての作品が共通して水に恐れを抱いていることに驚かされました。
水分子を想像した藤澤さん、粒子の集合体としての”いずい”(東北の方言で「気持ち悪い」)液体のイメージ。水中での動きの抵抗から、非合理的な空間、その集合を考えた瀬川くん。味村くんは壁の高さの変化、そして配置で人々を深く、深く水中へ誘う空間を表現し、死へと繋がるというストーリーを作ります。
一等、加藤さんの作品
水への恐れを最も純粋かつセンセーショナルに表現したものです。
首に絡みつく糸は水を表しています。呼吸困難をもたらす水。しかし生命にとっては欠かすことのできないものです。吊られた彼はその糸を断ち切ったとしても、底へと沈み、死が確定します。救われる道は唯一つ、明るい空へ繋がる糸への、猛烈な足掻きです。振り切った表現は、私たちに水中での価値観を転換させます。
もうひとつ、この作品の面白さに、シンプルであるからこその様々な読み合いが私たちの間で行われた事がありました。「水」はそのまま「お金」と読み替えることが可能であることや、模型を倒したときに、糸の自由挙動と相まって、新たな水との関係のストーリー空間が生み出されました。そこにみられる概念の可塑性は、水の可塑性とメタに類似します。
同、一位の柴田さんの作品。
柴田さんは水空間における移動という視点から2作品プレゼンしてくれました。特に皆の注目を集めたこちらの作品。積層するアクリル板からなり、その氷のような透明度と、切断面の反射がキラキラ美しく輝きます。
「水中」での移動を考えた時、それは歩行によるものではありません。建築が歩行に支配されない時、ひとつの大きなリミッターが外され、空間は飛躍的に自由になります。建築がフラットな平面としての床を必要としなくなるのです。模型においてそのことは、反射した像との間に描く有機的な空隙に人が浮かぶように表されます。
「人が空を飛べたら、また違った空間があったかもしれない」
日常の範疇を飛躍した建築の空想、その可能性は遥かに広がっています。
次回のテーマは「病気」です。
参加者:藤澤、瀬川、味村、柴田、平井 特別参加:加藤