今回のテーマ「時間」
一等:藤澤睦
講評:平井悠大
本年度、第5回目。今回は、日程的に厳しい中での開催ということで、即日的に時間の制限を設けて模型製作を行いました。
近代社会における典型として、「時間」はひとつの尺度として扱われ、座標軸となります。しかし、それは明確で即物的なx,y,zとは異なる不思議な存在です。
時間には情緒性があり、空間性があり、そしてやはり私達の規範となるグリッドでもあります。私達は時間に縛られて日々を過ごし、時間を忘れて眼前のことに没頭し、時間を超えて思いを馳せます、、。
もし、時間に即物性をもたらした時計が存在しなかったならば、我々にとって時間とは徹頭徹尾エモーショナルなものであり続けたのかもしれません。
今回の一等は、1000年単位で建築を考えることをテーマとした藤澤さんです。
3層のスラブは時間経過を表し、苔むし、やがて語り継がれるような廃墟へと移行してゆきます。吹き抜けに立つ一本の木が、時間の流れのメタファーとしてスラブ間をつなぎます。
そうした長いスパンにおける建築を考えることが、これからは必要なのではないのか、と、建築家が考える一方、外皮としての建築は典型的なビルディングそのもので、人々にその悩みは伝わりません。一般の人々に伝わらない建築、そこに藤沢さんはもどかしさを感じると訴えます。
哲学や建築家の議論の分かりにくさに対する批判と、一方で分かり易いもので溢れることへの是非など話が膨らみました。シンプルだけど奥が深いということが一つの理想として挙がります。
他の作品として
柴田さん:時の支配性から、「重力」という不可避の力学空間を想起し、その不可逆性や、相対性からくる多様さを、複数の抜け穴を有した落下空間として表現しました。
平井:時、時制における「今」の特殊性に着目し、建築物における人々のふるまいが「今」性をもつパーツを採集した上で、そこに同時に現れるモノとしての瞬間性を取り上げました。
次回のテーマは「切羽詰まってる」です。
参加者:藤沢、柴田、平井