Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

第106回 「浮気」

今回のテーマ「浮気」

 

一等:宍戸元紀

講評:平井悠大

 

  2018年度、第8回目。恋愛とは人間という種に固有の異性とのコミュニケーション方です。その理由としてヒトの頭脳の異常な発達があり、母体内で10ヶ月という期間をかけても胎児は他の哺乳類のようには成熟しません。出産後も長い期間一人では生きることはおろか、立つことすらできない我が子。長期に渡り必要とされる子供の保護は男女に発情期で終わってしまうような関係ではない、恋愛という長期のコミュニケーション求めたのです。

 一方でその子供も、3年もたてばある程度の自律的な行動が可能となります。生物としての恋愛の必然は3年で消滅し、それと同時に恋の魔力も3年で終わってしまう。このことが近年、脳科学の研究で明らかとなっています。長い結婚生活の中で浮気心が生じてしまうのは生物的な裏付けのある悲しい現実です。

 

 今回、心の複雑な動き「浮気」をテーマに、様々な蠱惑的な模型が集まりました。

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一等は、浮気の男女差を描いた宍戸くんです。

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 男性の浮気は、肉体的欲求の下で精神的に満ち足りた環境下で行われることが多い一方、女性は、精神的欠落の代償として浮気を行うことが多いようです。

上側の男性空間はホワホワとした白いモヤに包まれ、即物的な肉体的快楽を感じます。対する女性側、黒く殺伐とした空間は彼女の孤独感を痛々しく伝えます。

パートナーといえど彼らの抱える問題は大きく異なる。彼らが異なった道を歩んだ果に「浮気」という行動に移るストーリーが伝わってきます。そして、互いに異性に求めるものが異なっている。にもかかわらず、彼らの空間の重ね合わせが見事な調和体となること。それが切なくもリアルに感じられます。

複雑な精神状態を空間表現に落とし込んだ傑作です。

 

その他の作品

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 藤沢さんは、源氏物語に見られる、古来の自由な恋愛観の世界の”美しくはかない”ものとしての「浮気」を描きました。人の色恋を描いた和歌が、近年”美しい”と取り上げられる単管仮設構造物に展示されています。一瞬の華だから浮気はより甘美なものとして人を誘うのでしょう。

 

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 木村くんの作品は、浮気に誘われる人の経時的な状況を示しました。ぐるぐると渦巻く道は浮気をする人の惑いの道です。

浮気にはある結果と、その責任が問われます。ひとは、浮気をしてしまうのか、そして、それにどう決着をつけるのか、揺れ動く気持ちが連続する人生のような作品です。

 

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 味村くんの作品は、パートナーにバレずに欲求を満たそうとする男性を取り上げました。見え隠れするステップを忍び進んで、彼女にはない魅力をもつあの人への接近を図る。ゲームのように「浮気」を楽しむ男性のエゴが強く感じられます。 

 

 次回のテーマは「先生」です。

 

 参加者:藤澤、味村、木村、宍戸