一等:藤本翔大
講評:関健太
本年度5回目。
多様化を続ける現代において、今はもはや単一なオーダーでは太刀打ちできない。
建築やあらゆる企画、イベント、プロダクトなど様々な分野において「+α」は必要事項となってきている。何を+するのか。+されてきた背景、そしてそもそも実態としての+が本当に正しいのかといった議論は今後何かを創造していく者にとっては大切なことである。
今を生きる私たちの世代が+αというものをどのように捉えているのか。
テーマ「+α」
一等は藤本案。
場所に建築がつくられていくこと、その現象自体が+αの連続体であると捉えた。
確かに現代において生産されてきた建築物は様々な進化を遂げ、建築そのものが+αの産物といえる。
しかしこの案では+αの産物ともいえる建築を批判的に捉え、+αの質に目を向けている。現代の建築のほとんどは+αの量が多いように捉えられる。しかし土を掘り、柱を立て、屋根をかけ、壁を挿入するといった付加的な操作が多いほど建築が生まれる場所としての価値が失われているのではないか。(下の模型)
上の模型では、いわゆる自然地形に見立てた地面に対して、スラブや柱を必要なだけ挿入するといったスタディである。自然物と人工物が重なる構築法が、ある種の場所の価値を導く可能性を秘めている。
限りなく少ない操作でも建築は創造できる。
建築は妥協の産物とも言われるが、その中の手を加える量(+αの数)はデザインにおいて吟味されうる一つの事項なのかもしれない。
ヴァナキュラー建築は気候や立地、そこで住む人々の活動といった風土に応じて造られる建築である。日本では民家がその部類にあたる。
今後未来で+αの質がさらに向上していく中で、建築はより少ない操作で作ることが可能になるかもしれない。
伝統的なヴァナキュラー建築が自然に敬意を払い、自然に開放的であり、人間が自然の中で快適に活動できる空間をつくりあげている事実から私たちは学ばなければならないように感じる。
自然に対する姿勢を忘れないためにも、未来でのヴァナキュラーを求めて建築を思考する必要があるだろう。そして新たな建築の可能性を導き出していく。
挑戦は続く。
次回のテーマ 「つつむ」
参加者:栗田、関、土田、丹下、中、林、藤本、渡辺