Harada Masahiro Lab

原田真宏研究室ゼミ活動 「SYU-MAI」HP

124回「情報」

令和3年度の原田研B4による第一回SHU-MAI。今年後からInstagramにて活動内容を随時発信します。

 

かつてマグリットは『赤いモデル』で靴と足の意味が融合していく姿を描いたように、各時代における物の意味は変化していく。

2021年4月、国土交通省の行う情報基盤「PLATEAU」で3D都市モデルが交付された。建物も持つ情報をより解像度の高い状態で記憶し、共有する。あらゆる建物がデータとして扱われ一般化したとき、都市はどう変化するだろうか。身体空間と電脳空間、建物が持つ意味、人が持つ意味、町が持つ意味がつくる世界はどんな色をしているのか。この1年で急速にデジタル化した我々だからこそ、フィジカルな案を期待した。

第1回SHU-MAIは「情報」となった。

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同票数のため最優秀賞は2人になった。

 

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最優秀賞 鈴木大佑案

『情報記録建築』

「 建築は情報記録装置としての可能性を秘めている。そこで建築に建物や空間といった以外の情報を加える。パンチカードが穴の位置や有無で情報を記録するように、構造物である柱の位置や有無によって情報を加える。ピロティにはデータが可視化された柱として現れ、それと対になった唯一の内部空間が出来上がる。
 この建築は情報記録装置であると同時にデータからモノへ変わっていく瞬間を切り取る。」

 

講評
 柱は応力に対して空間を自立させようとする力を働かせているが、人はきっとそれを意識せずその空間を使う。彼らにとって柱は存在であり、単なる物体としてとらえている。この案はその意味を的確に置き換え、空間化したことが評価できた。より空間側の視点に立った状態で、物に他の意味を付け加えた建物は、現代から見た遺跡を見るような感覚に近い。

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最優秀賞 柴垣映里奈

『情報に存在する構造体』

「 情報は無重力の目に見えない存在だが、それを支える無重力で目に見えない構造部分が存在する。情報も思想や根拠という構造体に支えられているのだ。
 この情報の構造体部分に存在するfilter bubble という問題点に着目した。情報は本来様々な思想や根拠といった構造で支えられているが、偏った見方をしてしまうと fillter bubble の問題点のように情報が、偏った思想や根拠という脆い構造で支えられているということになる。こうした情報の構造体の2面性を表現するために、構造体としての柱で階段を支え、それをないものとするように片面にミラーを取り付け地面を反射させ、片面からしか見ないと階段下に何もなく浮遊しているような状態を作った。階段を目の前にした時それがどう支えられているかも考えず上るという多数決のような偏った意見を全てだと信じ込み登って行こうとするのは危険である。」

 

講評
 階段は登るためのもの、ドアは入るためのもの。我々はそれを記号として使用している。この案は現代人が忘れかけている根本の気持ちを思い起こさせる点が評価された。あえて視点を設定し、明確に対比した構造体は、我々のメディアを通した情報の偏りを示唆しているのかもしれない。少なくとも階段の上ではまったく気付くことのない不可解な構造体は議論を呼んだ。

 

 

総評

 建築は長い歴史のなかで、あらゆる変化に対応してきた。ある状態からある状態へ、変化を繰り返し、それぞれの思う「建築」というものになった。今回はそんな視点が重なる場における空間を考える機会となった。思考から行動へ続く。

 

5月12日 「跨ぐ」

 

出案者:秋本、粟竹、安藤、小野塚、近藤、柴垣、鈴木、中村、前田

文責:秋本